夜に生きる
いまからする事をやり切るには、少しばかり準備が必要だ。
まずはグラスを用意する、重さを感じる上等なものがいいだろう。その中に丸氷をそっと入れる。中の注ぐ琥珀色の液体はグレンフィディック12年。そこまで上等じゃあないが、充分だ。パンチが弱い?関係ない。なにより俺はこいつが好きだからだ。
ボトルは横に置いておけ。2時間は短くない。
次に俺はシガーカッターを取り出した。今日のもう一人の相棒はロミオyジュリエッタのNo.2だ。マッチでゆっくりと火をつける。できるだけ空気を孕ますように、満遍なくじっくりと…。火が消えると同時にロミオの芳醇な香りが部屋に立ち篭める。
さぁ…大方、準備は整った。
ギシっと、一人で座るには大きすぎるソファーが音をたてる。俺は深く腰を沈めるとグレンフィディックに口を付けた。
次いで、テレビのスイッチを入れる。これからの2時間はとある男の生き様をみる。
さてさて、今晩は。ドロです。今回はベン・アフレック監督、主演作品「夜に生きる」です。
ノワール感を意識したので、ちょっとかっこつけて始めてみましたが如何でしょうか。気に障りました?笑
実際、こんなハードボイルドな空気感が好きな方はまずお勧めします。世界観はすごい良いのでそれだけでも一見の価値ありでございます。
時は禁酒法時代のボストン。1920-1930年あたりですね。
主人公のジョーは、第一次世界大戦から戻ると人生で従うべきルールはない。と無法者へと身を落とす。犯罪に手を染めていくうちに、マフィアのボスの愛人であるエマと恋に落ちてしまう。それは禁断の恋。バレてしまえば命は無い。エマとの出会いがジョーの運命を大きく狂わせていく…。
といったさわりですね。
マフィアとかギャングのクライム映画ですが、LAギャングストーリーやTVゲームL.Aノワールの様な40.50年代の雰囲気とはまた違った、暗く、どんよりとした空気が漂っています。
ですがこのボストンのブルーのフィルムをかけたような画面のタッチが、冷たくもクールでした。
ギャングでマフィアでクライムなんて言うとパブリックエネミーやゴッドファーザーなんかを連想しがちですが、終始そういった雰囲気の作品ではないです。銃撃戦やカーチェイスなんかも勿論ありますが、クライムに主眼を置くと言うよりかはラブストーリやヒューマンドラマのテイストが強いと思います。ベン・アフレック演じるジョーも無法者→ギャング→マフィアと世間的には悪だと思われる立ち位置の人間として生きていきますが、真面目で正義感のある性分が滲み出て目に見えてきます。
マフィアの世界じゃ、ちょっとヤサオ過ぎるんじゃない??なんて思ってしまうほどには。最後に悲劇が待ち受けていますし、多少は冷酷になりますがそれでもまだマフィアらしくはない。優しい人。(めちゃくちゃかっこいいのは確か)
しかし、最期のクライマックスの戦闘シーンでは「やるときはやる男」ヤサ男の部分は何処へやら、非情に冷酷に。とてもカッコいいジョーの姿を拝めます。
欲を言えば、個人的にはもっとハードな シーンも見たかったです。グロテスクやバイオレンスを使わなくても、もっとエグみのある作り方は出来たはず。ただ元となる作品があるそうなので、あまりにかけ離れてしまえばリスペクトに欠けますね。
なので良くも悪くも、わりとあっさりとしてる印象。クライムムービーは何処かカタルシスを感じるような幕引きが多いですが、暖かい終わりでした。勿論、因果応報と言うように自分がした事は自分に返ってくるようにジョーにもいくつかの悲劇は訪れるものの、全編を通して振り返ると寒色のスクリーンが徐々に暖色になっていくような…そんな構成。ジョーがマフィアなのに人間味に溢れていると前述しましたが、ジョーは世間的には悪人に落ち、夜に生きつつも最愛の人をみつけ自らの立場とは逆に、冷め切った心から、愛のある暖かい心を取り戻していってるのかもしれませんね。
因みにジョーはバットマン。本妻となるグラシエラはガーディアンズのガモーラです。MARVELとDCの垣根を超えたラブシーンが見られますよ!笑
吹き替えだと、ジョーの運命を狂わせた女である、エマの声を声優の朴璐美さんが演じられてます。ガーディアンズではガモーラの声をあてているので「そっちか!」とファンならではの違和感があるかもしれないですね。笑笑
ただ、役の印象的にはマッチしてました。声優さんの采配とは、こうあるべきと思いますね。
秋の夜長には是非ともオススメの作品、ビシッとスーツで決めて、ウイスキーとシガーを用意して鑑賞すれば、あなたも禁酒法時代のギャングです。iTunes Storeでもレンタルできますよ!
ではではまた次回。
次回は「メッセージ」「アトミックブロンド」「アウトレイジ最終章」あたりでしょうかね。
お楽しみに!